一般社団法人大阪工研協会 第75回(令和7年度)「工業技術賞」を受賞しました
工業技術賞は科学技術の振興と研究者・技術者の奨励のため、研究開発・工業化技術の顕著な成果に対して(一社)大阪工研協会から贈呈される歴史ある賞です。
今回受賞しましたのは、ポリ乳酸(以下、PLA)の生産性及び耐熱性を改善する結晶核剤RiKACRYSTAです。
PLAは植物由来であり、生分解性を有する樹脂のため、環境に優しいプラスチック材料として広く認知されています。近年、ポリエチレンやポリプロピレンなどの石油由来樹脂を代替するプラスチック材料として世界的に利用が期待されており、販売量も年々増加しています。今後、さらに普及が進むことが予想されるPLAですが、結晶化速度が遅いという特徴から、成形加工が難しいという課題があります。この課題を解決するため、様々な結晶核剤が開発されてきました。しかし、実用化の面では、生産性の低い成形条件を選択せざるを得ない場合や、生産性を優先することで耐熱性の低い成形品が普及しているという現状があります。
当社は長年、ポリオレフィン樹脂向け結晶核剤の開発・製造・販売を手掛けてきました。その知見を活かして、先般、ポリオレフィン樹脂向けに結晶化速度を上げる新規の結晶核剤RiKACRYSTAを開発し、その効果検証を進めてまいりました。その中で、RiKACRYSTAをさらに改良することにより、PLAの生産性向上及び耐熱性の改善に寄与できることが確認され、その研究内容が認められ本受賞に至りました。
PLAにRiKACRYSTAを少量(0.3~1.0wt%)添加することで、成形加工における冷却時間が短縮され、その結果、成形性・生産性の改善、結晶化度が向上していることによる耐熱性の改善が認められました。加えて、成形加工時間の短縮によるエネルギー消費量の低減効果が評価されています。また、溶解型のPLA用核剤とは異なり、RiKACRYSTAは高温での溶解を必要としないため、PLAが熱分解してしまう懸念が少ないといった特徴もあります。
RiKACRYSTAにより耐久性と耐熱性が向上したPLAは、食品容器やカトラリーなどの耐熱性を必要とする用途へと活用の幅が広がるほか、物流時のトラブル回避にも寄与します。
このような特性を踏まえ、RiKACRYSTAは環境にやさしい素材であるPLAの普及に貢献できるものと考えております。
<受賞内容>
・研究題目
ポリ乳酸の生産性及び耐熱性を改善する改質剤の開発
・受賞者
研究開発部 研究員 西川理穂
写真は表彰式(2025年5月23日)
<RiKACRYSTAのPLA添加における性能比較>
射出成形による成形完了までの冷却時間の比較
※本受賞内容は、雑誌「科学と工業」の2025年8月号に掲載予定です。
※RiKACRYSTAは当社の登録商標です。